紅白雑感

NHK紅白歌合戦を最初から最後まで通して観たのは
数年ぶりのことでした。最初、鶴瓶師匠の頭皮アッ
プから始まった時には、えげつない演出過剰だった
らどうしようかと危惧しましたが、終わってみれば、
ここ数年来で一番充実した内容だったのではないか
と思います。今、NHKの芸能部としてできる全力を
尽くした、という印象を持ちました。紙吹雪も、ス
モークも、ディスプレイも、大道具も、4時間半の
生放送の限界に秒単位で挑戦していた印象です。

「歌の力、絆」というテーマも活きていたと思いま
す。特に、Dreams Come Trueコブクロは、そ
れぞれ、お連れ合いとお母様を亡くされて、という
想いがあるだけに、心に響きました。吉田美和さん
が明るくて健気で、うるうるきてました。そして、
ZARD美空ひばり阿久悠、そして内山田洋(ク
ールファイブとだけクレジットされていた)、と亡
くなった人を偲ぶ瞬間が、今、生きている自分と自
分たちを感じる演出になっていたと思います。

それにしても驚いたのは、動員した出場人数の多さ
です。歌手は56組くらいだったとしても、バック
バンド、三味線、ダンサー、宝塚、早乙女太一くん、
おしりかじりの子供たち、大学の合唱団や手話クラ
ブ、果ては、上杉軍団まで登場して、僕の想像では
おそらく2000人近い人達が出演したのではない
かしら?

特にGacktの出演シーンはあの5分弱だけのシーン
のために300名くらいは時代劇の扮装のエキスト
ラを使っているわけでNHKも奮発したものです。お
かげで小林幸子さん恒例の「大道具」が霞んでしま
いましたね。

女性演歌歌手が歌っている時のバックには、ハロプ
ロやAKB48を配置する工夫も、ゲスト審査員全員出
演のトークも、とにかくチャンネルを変えられない
ために必死の努力という感じがしました。そして、
その成果はあったのではないかしら?トークは、場
面転換のための「つなぎ」に徹する方針だったよう
に思います。

新聞各社は、決まって紅白史上何番目の低視聴率と
揶揄するように書き立てますが、「お茶の間」とい
う言葉が死語になり、これだけテレビ離れが進んで
いる時代に、58年連続して(多分)、大晦日の番
組中最高視聴率をとっているとすれば快挙と言える
のではないかしら。「千の風」がヒットしただって
間違いなく紅白効果だったはずです。

今だにわからないのは、何が紅白の勝敗の基準なの
か、ということですが、まあ、日本らしく「空気」
で決まっているのかも知れません。中居君が白組で
歌って、赤組司会なわけですから、彼は勝率100%
で必敗率も100%だったのですよね。鶴瓶さんの話
が長くなりがちなところを、見事にフォローして、
きちんと進行している姿は、成長を感じました。み
のもんた、よりも、圧倒的に好感度高かったと感じ
ます。

思えば、男性陣には、桑田、GLAYラルク、ケツ
メイシ、Def Tech、Orange Rangeミスチル
福山、B'z、Kinki、V6、嵐、小田和正などなど、出
場していない大物がたくさんいるのに対し、女性陣
は、CDの売り上げから言っても、せいぜいユーミン
宇多田ヒカル倉木麻衣柴咲コウMisiaヤイコ
くらいなものではないかしら。そういう意味では、
女子高生がひっぱっている現在の音楽市場は、圧倒
的に白組に有利な構造なのだろうと思います。やっ
ぱり、吉永小百合(初出場した1962年の視聴率は
80%!)、都はるみ、宝塚現役トップ、あたりを持
ってこないと太刀打ちできないのではないかなあ。

個人的には、徳永英明がカバーしている楽曲をいく
つかレパートリーに加えたいと思ったこと。そして
「品格」の坂東さんが審査員でしたから、いつか、
僕もあそこに座っていたいなとも想った次第です。