ボトム・オブ・ピラミッド

The Bottom of the Pyramid とは、C. K. プラハラード博士
が提唱した概念で、現在の地球社会で年間3000ドル以下の
所得で暮らしている40億人を指す言葉です。そして、この
層が、世界最大の成長市場であり、ビジネスチャンスでもあ
ります。逆に、このBOP層の生活・教育水準がらないと貧富の
格差が増大し、社会の不安定要因になるでしょう。
http://www.amazon.co.jp/dp/4901234714/
 
ここ40年ほどの日本企業のビジネスモデルは、世界水準
から見れば「富裕層」を主たる対象としたものでした。
日本のメーカーが得意とする高品質の製品は、年間所得2
万ドル以上のトップ数パーセントの顧客を相手にした商品
だったわけです。ところが、少子高齢化は進み、いわゆる
先進国は軒並み人口減少社会に突入していくことになると、
この狭い市場だけでは立ち行かなくなる可能性があります。
 
25日に収録が行なわれ、今日から放送されるCS朝日ニュー
スターの「ラーニングプラネット」では、このBOP市場で
最も注目を集めている、英国ユニリーバ社の「シャクティ
プロジェクトの事例を取り上げました。
http://asahi-newstar.com/program/learning/
  
インドでは、BOP市場が約4億人。そこで石鹸や洗剤などを、
夫を喪った女性が、商店の存在しない村々を自転車でまわ
り、行商するのです。また、手洗いやシャンプーの習慣が
ない子ども達に基本的な衛生教育を行なっていきます。
農村部では、単価が高いとまったく買ってもらえないので、
小分けして1個2.5円程度に価格を押さえる戦略をとって
います。
 
政府の手が届かない奥地の村で、女性に就業機会を創出し、
社会教育活動も行ない、しかもCSRとして完全な持ち出し
という訳ではなく、営利企業として薄い利益を出しながら、
子ども達に自社ブランドへの愛着を高めていくという点で
「持続可能性」(sustainability)の高いプログラムと言
えるでしょう。2001年のスタート以来、試行錯誤の連続だ
ったそうですが、今では、BOP層への最も効果的なアプロ
ーチとして国際的に高い評価を得ています。
 
収録中に気づいたのですが、戦後すぐの日本の農村部では、
似たような事例があったのかも知れません。タバコは箱で
はなく、1本ずつバラ売りされていました。駄菓子屋のお
菓子も単価は非常に安かったはずです。スーパーやコンビ
ニに慣らされた私たちは、人と人とが直接触れ合いながら、
少額のお金と商品をやりとりする商売の原点を見失ってい
たのかも知れません。
 
この番組では、もう一社、日本のIHI(旧・石川島播磨重
工業)が、ODAを活かして、ベトナムで1200メートルの斜
張橋を架け、地元社会に貢献した話も紹介しました。日
本国内のインフラ整備は、かなり飽和しています。老朽
化した橋の架け替えなど、更新需要はあっても、世界最
高水準を誇る日本の土木・建設技術を活かせる舞台は、
加速度的に海外になっていくことでしょう。となると、
文化背景の異なる現地の労働者とうまくコミュニケーショ
ンをとりながら、高品質の建築を実現できる「国際派」
のプロジェクト・マネジャーが不可欠になっていきます。
  
最近では、経済産業省もBOPに注目して研究会を始めてい
ます。
http://www.nexi.go.jp/service/sv_m-tokusyu/sv_m_tokusyu_0905-2.html
 
「64億人の笑顔」を目指すハロードリーム実行委員会
を通じて、地球規模で物事をとらえる重要性を強調して
いますが、今の時代、経営者の方は、いや全てのビジネ
スピープルが、日本と先進国の常識にとらわれることな
く、本当の意味でグローバルな発想で考えることが、ま
すます必要になっていると思います。
    
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