英語を社内公用語にすることの是非

日産自動車楽天に続き、ユニクロも、英語を社内公用語
するそうです。「日本のオフィスも含めて、幹部による会議
や文書は基本的に英語とする」ことになったというニュース
が報じられてから、私のところに本件に関する取材が増えて
います。
 
私の基本的な立場は、全ての企業が英語を社内公用語にする
必要はないけれど、日本国内での「ガラパコス的成功」に甘
んじることなく、成長し続ける海外市場を主な舞台としてビ
ジネスを行なう企業であれば、全社的に英語コミュニケーシ
ョンのウエイトを高めることは不可欠だと思います。
 
従来のように「社内では日本語、社外向けの一部の情報発信
に限り英語」という二段構えでは、経営速度が遅くなります。
最初に日本語で考えて、ロジックを組み立てた時には、もっ
ともらしく思えても、いざ英語に訳そうと思ったらつじつま
が合わなかった、という体験をお持ちの方も多いのでは。最
初から英語で原稿を書いた方が効果的です。どうしても必要
なら、それを日本語に訳す方が、無理がありません。
 
昔は、情報速度が遅かったので、二段構えで翻訳している余
裕がありましたが、ネットの時代には、数分の遅れが致命傷
になる可能性があります。また、海外のステークホルダー
という分別自体が時代遅れ)への透明度が下がると、資金調
達も販路拡大も難しくなるだろう、と思います。

おそらく、楽天ユニクロも社内公用語として、本当に定着
するまでには2、3年かかるでしょうから、今から舵を切っ
ておくのは賢明な選択ではないでしょうか?いや、今からで
も、確実に曲がり切れる保証はありません。いわんや、他の
会社は、よほど社内英語力の向上に力を入れないと、為替レ
ートが円安(ドル高に限らず、対人民元やルピーで)に振れ
た時に、買収の憂き目に合い、結局、英語を押しつけられる
危険性がありますね。特に英語のできる人材がトップにいる
会社とそうでない会社は大きく差がつくと思います。
  
もちろん日本語能力が低くて良いなんてことはありません。
日本語も英語もビジネスで成功する必要条件ではあっても、
十分条件にはなりません。

「英語屋さん ―ソニー創業者・井深大に仕えた四年半」
集英社新書)の著者、浦出善文氏がこのタイトルをつけた
のは、当時、ビジネスマンにとって英語ができることはかえ
って出世のハンデだったという事情があります。しかし今だ
に、英語運用能力を特別視する傾向のある企業も少なくあり
ません。そうではなく、グローバルに発展する企業であれば、
すべてのプロフェッショナルが英語ができるのは必須。ただ
通じれば、発音はジャパニーズ・アクセントがあっても結構。
上っ面の発音や流暢さではなく、中身で英語力を評価できる
ようにしないといけません。このことは英語を社内公用語
する会社が肝に銘ずるべき警鐘だと思います。