アリヤラトネ博士の講演

10月14日(木)明治学院大学白金キャンパスで、スリランカ
農村開発運動のリーダーであり、ノーベル平和賞候補にもなっ
たアリヤラトネ博士(サルボダヤ運動創始者)との対話集会が
行なわれました。
 
いつもながら仏教哲学に基づく深いお話でしたが、印象に残っ
た部分をまとめてみたいと思います。

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employment とengagement は違う。就職(労働の対価を受け取
る)のための勉強よりも、自分が全身全霊をかけて打ち込める
事業(自らの成長のため)に従事することが大切。日本の大学
も社会に「関わり」を持つ方向に向かってほしい。
 
地球上で空気が atmosphere(大気圏) で循環するように、人
々の心や気持ちは psychosphere(精神圏)で循環している。
ここにgreed(強欲)や ill will (悪意)ではなく、loving
kindness(慈愛)を流すのが大切。
 
ignorance(無知)とは、諸行無常を理解しないこと。万物流転
を知っていれば、所有が幻想であることに気づき、エゴから自
由になれる。五感から生じる感覚に基づく思考、感情に振り回
されるのではなく、真の自分自身との関係を理解することが大切。
 
meditation (瞑想)は、五感に基づく感覚を鎮めて intuition
(直観)を研ぎすますこと。そうすると全てのものがつながって
いることがわかる。そうすると心の平安が訪れ、暴漢に襲われた
としても、取り乱すことなく落ち着いていられるようになる。
(注:アリ博士は実際、自宅で暗殺者に襲われたことがあります。
 しかしアリ博士があまりにも泰然自若としていたので、暴漢は
 気圧されてそのまま帰ったそうです。)
  
大学でもあらゆる学校でも、瞑想とボランティア活動をとり入れ
ることをおすすめしています。実社会とつながりを持った活動を
する中で、知識を知恵へと昇華させることができる。サルボダヤ
では「道を建設する作業を通じて、人間を開発する」という考え
方に立ちます。
 
ほとんどの国で農村・コミュニティは崩壊しています。ただ、小
さな芽から絆の再生は可能。ベルギーで賃上げを求めストを決行
した労働者に呼びかけて、道路清掃活動を提案した。その光景を
見た経営側は、感銘を受けて、賃上げを認めた。その道は今、サ
ルボダヤ通りと呼ばれている。
 
弁護士の方からの質問「瞑想で自分や宇宙とつながる、という実
感が持てません。」
 
アリヤラトネ先生の答え「あきらめないことが大切。コロンボで、
宗教・民族を超えて30万人が同時に瞑想した時、豪雨が降ってきた。
私は人々に傘を閉じ、雨が止めと願うように呼びかけた。2分後、
雨は止みました。」
 
この世界も肉体も、個体、液体、気体、熱、空間の5つの元素
からできている。人間はさらに mind (意識)を持っています。
この肉体と意識の関係を理解することが大切。心のエネルギー
は無尽蔵なのです。
 
瞑想のポイント。姿勢をまっすぐに座る。宇宙はエネルギーに
満ちていると感じる。目を閉じて鼻孔に意識を向け空気の出入
りを感じる。気がそれたら、元に戻す。自分の肉体を愛し、隣
人に社会に世界に愛を向ける。良き決断をする。宇宙との一体
感を感じられます。これで20分。
 
全ての人が、日本や世界を変える力を持っている。それは、自
分の内側から始めること。人は4つの姿勢「立つ、座る、歩く、
寝る」を組み合わせて日々の生活をしている。これを意識をも
って行なうと、それ自体が瞑想になる。これを続けると、本当
に自分がやるべきことが見えてくる。
(注:これは mindfulness という概念で説明されます)