今村 岳司・新西宮市長のスピーチ

西宮市長に就任された 今村 岳司さんのスピーチ。しごくまっとうで、それでいて爽やかな感動を生む言葉だと思います。今回の西宮市長選挙は、3人の候補がみんな粒ぞろいで、有権者の方は誰に投票するか迷ったはず。地方首長の選挙がこういう高いレベルで行なわれ、そして、素晴らしいリーダーが選ばれるプロセスとして機能することが、日本の民主主義の水準を一歩ずつ高めていくことにつながると思います。
今村新市長の活躍をお祈りするとともに、市役所職員の皆様がまさに市民の方を見てばりばり仕事をされることを期待したいと思います。

以下引用

【市長から、西宮幹部職員への訓示(平成26年5月16日)】

私についていろいろな噂話が飛んでいるようですが、
すべて無視して、いまから話す私の直接の言葉を以て判断して下さい。

私は、ものを申すのも無礼にあたるようなやんごとない存在ではなく、
マネジャーであり責任者であって、皆さんとともに住民の福祉を増進するパートナーです。
だから、意見と議論を受け容れる用意があります。
私は合理的な指摘であれば、自分の考えを変える用意はあります。
これまでは意見できない環境があったり、意見をしても聞き入れられなかったり、
意見をすれば攻撃されたりしたかもしれません。
自分に自信のない人間は合理的な指摘をされると恐怖心を持ち、攻撃的になるものです。
私は政治家として自分に自信があります。これまでとは違うタイプだと思ってください。
だからこそ、現場で専門性を発揮して働く職員の皆さんに敬意を持っているのです。
私には、仕事上での人の好き嫌いはありません。
能力が高く成果を上げられる人が好きです。
私に対してあたりのよい人ではなく、住民の福祉の増進のために仕事をする人を私は重んじたいと思います。

皆さんは管理職として、自分が責任を負うべき部下があり、
かつ自分の所管している事務の先には住民がいることを忘れないでほしいと思います。
今回の選挙後に「新市長の方針がわからない」という理由で
判断を停止していた人が多くいたようです。
あなたの止めた判断の先には部下がいて、その先には住民がいるのに。
なぜ、私に直接聞きにこなかったのでしょうか。
私の連絡先はすぐにわかるはずです。
「非公式に私の意向を聞きたい」「私の耳に入れておきたい」とこっそり連絡をくれた幹部は一握りです。
幹部職員として住民と部下のために責任感を持ってもっと主体的に動いてほしいと思います。

管理職は決定事項に関与していることを意識してほしいと思います。
上司に対して反論や提案をするべきです。
「言いにくい」とか「慮ってくれ」は甘えです。
自分はどう思うのか、企図を明確に示してください。
責任者として、上からの指示をただ受け入れるのではなく、
部下や住民に対して、自分が責任を持って説明できるのかどうかを常に考えてください。
皆さんは私の方針を正確に翻訳して部下に伝える責任と、
現場の状況と提案を正確に私に伝える責任を負っています。
課長はその課の事務を所管しているだけではなく、部長とともに部を経営してほしいし、
部長は部の事務を所管しているだけではなく、局長とともに局を経営してほしい。
つまり、局長は局を所管するだけではなく、
私とともに文教住宅都市西宮の経営をするのだと思ってほしい。
私は政策判断をする人間ですが、専門性を有しているのは現場です。
その矜持を持ってほしい。

幹部職員は仕事の意味をしっかりと部下に伝えてほしい。
責任を持って、部下に闘う意味を伝えてほしい。
「市長が言うんだから仕方ないよ」で彼らを働かせないで下さい。
彼らはみんな、西宮の住民の福祉の増進のためにこの西宮市で働いているのです。
彼らが現場でやっている仕事が、ちゃんと西宮の住民の福祉の増進に繋がっているのだ、ということを、
きちんと部下に理解させてあげてください。
部下の矜持を守りきってください。

「どうされますか?」は責任放棄です。
何でもかんでも「みんなで意見を出し合う」のは自分の責任から逃れようとする態度です。
自分が専門性や責任を持つべきことなら自分の提案があるべきです。
「住民の福祉の増進」のために働いていることに責任を持ってほしいと思います。

地方自治法第2条第14項に
地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、
住民の福祉の増進に努めるとともに、
最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」とあります。
そのためには合理的であることが大事です。
その効果をあげるために、それが最も簡潔で迅速な手段かどうかを考えてください。
慣例や儀礼などの無駄を省き、仕事のための仕事を廃止し
「住民の福祉の増進」のために働いてほしい。
効果や目的につながらないことはどんどんやめていってほしい。
同時に、今使っている時間から生まれる効果が最大化されているかを常に意識してほしい。
時間より大切なものなど、この世の中に何もありません。
仕事にスピード感を持ってほしい。

さいごに。
私が政治を志したのは、
阪神・淡路大震災の時の自衛官や消防や自治体職員の姿を見たからです。
彼らは他人からの感謝を求めてはたらくのではなく、ただ粛々と自分の使命のためにはたらいていました。
私は、その高貴な姿に心を打たれ、日本と地域のために仕事をしたいと志し、その4年後に市議会議員になりました。
全体の奉仕者である市職員には敬意を持っています。

私は、サッカーにたとえるならば、
監督にやりたいサッカーがあって、そのために必要な外国人選手を補強するタイプではありません。
今いる選手でできる最高のサッカーをやればそれで勝てると考えています。
監督の好みのサッカーにこだわるのではなく、結果を出すことが大切であり、
私はここにいる西宮市職員で勝てると思っています。
これまでの市役所で問題だったのは、そのマネジメントと「社風」だけです。
そもそも住民の福祉を増進するのは現場職員であって私ではありません。
私はその方向性を明示し、責任を取るのが仕事です。
だから現場職員が最も能力を発揮できる方法で仕事はしてもらいます。

私個人のカラーを出すために突飛なことをしたり、
特定の誰かの利益のために不公正な行政推進を押し付けることはありません。
住民の福祉の増進のために合理的で効率的な方法をとればよいと考えています。
「革命」ではなく成果を出すために必要な最低限の改革を堅実に行いたいと考えています。
私は、これらの改革をやりきり成果を出すために、
西宮市長を2期ないしは3期、務めたいと考えています。
これからの改革は4年で過ぎ去る嵐ではありません。
みなさんも腹を括ってこの改革をともに推進して下さい。
また、この仕事は私の政治活動のゴールであり、
市長を辞めた後は一切政治にかかわるつもりはありません。
私はこの職責に、自分最後の勤めとして全てを賭けて取り組むので、
皆さんも職務の遂行に当っては全力を挙げて専念してください。

今日の初日からスピード感を持って、
変えなければいけないものをどんどん変えていきます。
地方公務員法第30条に
「全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、
且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念」とあります。
「ちょうどいい程度にやれ」とは書いてありません。全力でと書いてあります。
皆さん、全力で住民の福祉の増進のために仕事をしてください。

さいごに。
この中では、年長の部下がほとんどとなります。
慇懃な態度を取られるのは、面倒なので、どうかふつうに接してください。
これから改めて、よろしくお願いします。
(引用終わり)