活用原則

成人学習では常識なのですが、学校教育でも、よりよい学習を
提供するためには、「活用の原則」が大切だと思っています。

「この知識は、今は意味がわからないかも知れないが、そのう
ち役に立つから」とおっしゃる学校の先生がいいますが、これ
では学習意欲が高まりません。学んだことが、いつどのような
場面で、どういう風に使えるのか、活用のイメージが脳裏に描
けることがとても大切です。それが、学ぶ意欲に直結するから
です。

NHKの語学番組で、必ずスキット(杉田敏先生の番組ではビニ
エットと言います)が紹介されるのは、その言い回しがどんな
場面で使えるのか、具体的に映像化するためなのです。

たとえば、ダイエットにつなげれば、生物学の知識の吸収度は
高まるでしょうし、ファッションブランドの由緒と世界史を結
びつけることも可能です。カーナビのGPSで位置情報がわかる
のは三角関数の応用ですし、住宅ローンを繰り上げ返済すべき
かどうかは等比級数の和の公式で考えます。

つまり、教育者や研修講師は、学習者、参加者がどのような生
活パターン、仕事のやり方をしていて、どのような課題に直面
しているのか事前に把握することが大切です。相手の課題やニ
ーズが分かっていれば、現実面で活用する方法も見えてくるで
しょう。

逆に気をつけなければならないことは、教育者や講師が知って
いること、教えたいことを勝手に教えてしまうパターンです。
しかし、この罠にはまってしまうケースも少なくありません。
あくまでも学習者、参加者の立場に立って、教育・研修内容が
活用されやすいようにプログラムを設計し、実施することが大
切です。